水溶性シリカ・ケイ素が良い、という営業トークって本当によく聞きますよね。「水に溶けているからよく吸収します。だから濃縮液タイプが体に良いのです!固形タイプのシリカ(ケイ素)は、溶けないので、お勧めしません」。そういわれて、私たちも最初はそう信じていました。だって、「実際に水に溶てるし」なんとなくそんな気がしたのです。しかし、その「なんとなく」には大きな落とし穴があることを知りました。実際は全く違います。粉末や錠剤のケイ素商品でも水溶性のシリカ(ケイ素)はあります。薬品等を使って強アルカリで無理やりケイ素を溶かしている濃縮液タイプが、あたかも唯一の水溶性ケイ素とだと誤認させるような私たち消費者騙しの営業トークには説明には十分に気を付けましょう。
なぜ、濃縮液は強アルカリ性なのか? ケイ素を水に溶かすために、無理やり薬品で融解している!
まず、「水溶性」について考えてみます。「水溶性」というのは「水」に「溶」けて水溶液を作る「性」質のことです。水溶性のものが溶けている液体は「水溶液」です。
ケイ素サプリで水溶性をPRしている商品は多くありますが、液体状なので水溶性であると、液体状であることを水溶性の証明のように記載しているサイトが目立ちます。
ここがポイントです。液体状のものを水溶性と言われたら私達はなんとなく納得します。だって液体なのですから。でも、化学的に言うと全く異なります。
それが水溶液であるなら、「水溶性の成分が溶け出している」状態です。しかし、水溶液でなくても液体の状態というのがあるのです。
ちょっと混乱してしまうかもしれませんが、身近なものでご説明します。みなさん泥水ってわかりますよね?茶色い泥水のあの茶色は土の色です。土は水に溶けません。でもものすごく小さな粒子になると水の中で分散して液体になります。これをコロイド溶液と言います。牛乳もコロイド溶液です。たんぱく質や乳脂肪が溶けているのではなく分散している状態です。
つまり、液体状であっても「水溶液」ではなく「コロイド溶液」である可能性もある。ナノ化して分散させてしまえばそもそも水溶性でなくても構わないのです。
次に、私たちがきちんと理解しておくべきことは、ケイ素(Si元素)はもともと水(H2O)との親和性が低い、つまり、水に溶けにくい性質を持っている、ということです。
では何に溶けるのでしょう?例えば劇薬で知られる水酸化ナトリウムのような強いアルカリ性の液体への溶解度は高くなります(溶けやすくなります)。ケイ素はアルカリ条件で溶けやすくなるのです。そのため、本来、高濃度で水に溶けている状態は、自然な状態とは言えません。
そこで、無理やり水に溶かそうとする場合は、強アルカリ性にする必要があります。つまり、濃縮液は、「水に溶けているから水溶性だ」とアピールするために、ケイ素を強制的に薬品融解しているともいえます。強アルカリ性であれば、液体状態(水に溶けているように見える)ので、「水溶性です(実際にそのケイ素分子の特性として可溶化率が高いかどうかは別として)」と宣伝しやすくなるのです。
「濃縮液」を中性にすると固形化(ゼリー化)してしまう!水溶性をアピールするためには、強アルカリを保つしかない
一方で、濃縮液タイプのケイ素商品を、安全な中性に変えればどうなるのでしょうか?
なんと、濃縮液ではなく、ゼリー状になってしまいます。つまり、濃縮液タイプのケイ素は、自然な中性状態であれば、固形(ゼリー状)であるケイ素商品ということになります。そのため、「水溶性」という文字をわかりやすくアピールしたい場合は、強アルカリ性を保ち、液体の状態を維持する必要があるのです。だからといって広告宣伝のために、消費者が事実や危険性を知らされないことは、大変残念なことです。
本来は、固形、液体という状態に限らず、水溶性のケイ素(シリカ)は水溶性であり、不溶性のケイ素(シリカ)は不溶性である、というだけです。
これについて、わかりやすく説明したいと思います。
販売されているケイ素・シリカのサプリは固体、液体、ゲルの形を取っていますが、ケイ素そのものではありません。ケイ素を含む成分が入っている固体や液体やゲルです。
その中に入っているケイ素が水溶性か水溶性でないか、についてその商品の状態で判断することは正しくありません。ここでわかりやすい例として粉末状ケイ素を販売しているメーカーに問い合わせた時の回答を引用して解説したいと思います。
ビタミンCを例に、説明します。
皆様もご存じの通り、ビタミンCは水溶性です。では、『CCレ〇ン』のようなビタミンCドリンク(液体)に含まれるビタミンCは水溶性でしょうか不溶性でしょうか?・・・水溶性ですね。理由は飲料=液体だからではなく、ビタミンCはビタミンCだからです。では、キャベツに含まれるビタミンCはどうですか?キャベツは固体で水に溶けないから不溶性ですか?・・違いますね。固体に含まれていてもビタミンCはビタミンCです。だから水溶性です。
固体、液体という状態に限らず水溶性のケイ素は水溶性だという意味がなんとなくつかめたでしょうか?
さて、ビタミンCは水溶性なので簡単ですが、ケイ素はその原料や存在形態などにより溶解度が異なり、水にほとんど溶けださないようなものから溶けやすいものまでさまざまです。しかし、ほとんど溶けないものでも強アルカリには溶けますので、強アルカリに無理やり溶かしてしまえば液体状にはなります。そのため、私たちにわかりやすいように液体状にして水溶性をPRするといった手法が取られるのです。
たとえば、「植物性粉末ケイ素は、固形ですが中に含まれるケイ素は水溶性」です。先ほどのメーカーにも直接に確認したのですが、これは素材が植物性であることや、メーカーが水への溶解性が高まるケイ素(シリカ)の形にするにはどうしたら良いか研究開発をして生み出した独自製法によるものだということです。水溶性の非晶質ケイ素であれば、キャベツのビタミンCと同じようにケイ素が水に溶け出します。
結局のところ、「液体タイプだから水溶性で体に良い。固形タイプは水に溶けないからお勧めしない」という濃縮液タイプの営業トークは事実とは異なり、完全に消費者騙しだったのです。私たち、消費者は見た目や印象に惑わされず、本当に良いものを選ぶための知識が必要だと実感しますね。
固体でも水溶性!「水に溶けているケイ素(シリカ)が水溶性」というのは消費者騙し
これまでの説明の中で、「ケイ素はもともと水に溶けにくい性質を持っている。濃縮液の商品タイプは、強アルカリ性で無理やりケイ素(シリカ)を水に溶かす(強制的に薬品等で融解する)ことによって、水溶性をアピールしている。しかし、商品の形態が固形、液体という状態に限らず、ケイ素の性質が水溶性であれば水溶性ケイ素」ということを説明してきました。
このケイ素の水溶性について、もう少し詳しく説明していきたいと思います。
ここで、図1の「非晶質シリカの溶解度」を参照してください(※)。横軸がpH値(低いと酸性で、高いとアルカリ性。中性は7~8)です。数学的な説明は省きますが、縦軸が溶解度です。水が酸性から pH 8.5 くらいまではケイ素(Si)の溶解度は一定で、それを超えてアルカリ性になると溶解度が急激に増えていきます。つまり、非晶質ケイ素の水への溶解度は pH に依存しています。そのため、強アルカリ性であれは溶解度が高まります。濃縮液という表現をしていますが、何かを濃縮しているのではなく、薬品などの力によりpHをコントロールすることによって液体中での濃度を高めているのです。言うならば、強アルカリ性の条件下での限定的な濃縮液体状態です。(※『非昌質ケイ素』の詳しい解説は次のページ)
中性に近づけていけば、ゲル化が進んでいきます。ということは、かなり希釈した状態で服用して体内に流し込んでしまうと、濃縮液の状態とは、全く違う状態になってしまう可能性も十分にありえます。また、あるケイ素の医学研究会の本で、「固形のケイ素商品は水溶性ではない」というような説明がありますが、それも実際には違います。水溶性の非晶質ケイ素であれば、同じようにケイ素が水に溶け出します。
繰り返しになりますが、ここで重要なのはキャベツの葉が水に溶けなくてもキャベツのビタミンCが水に溶けだすということと同じように、固形商品が水に溶けなくてもその固形商品中のケイ素(シリカ)が水溶性であれは水に溶けるということです。商品が液体であることと固体であることを中に含まれるケイ素(シリカ)の水溶性かどうかとイコールで論じるのは全くナンセンスなことなのです。
(※図1 河野元治/鹿児島大学農学部生物資源化学科(2001)『粘土鉱物の生成』粘土科学40(3), 197-211, 20日本粘土学会)